三月三日
山から里へ光から闇の一日を
降りてし止まん移り行くは雨 不美男
やまから さ とへ ひかり からやみの いちにちを
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ふりてしやまん うつり ゆ くはあめ
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この一首は、初めは發句で、
遠 く より 降 りて し止まん 春 の 雨 不忍
とほ く より ふ りて しやまん はるのあめ
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といふ一句であつた。
けれども十七文字では意を盡せず、御負けに中句の「降りてし止まん」は、
「撃ちてし止まむ」
といふ「古事記」にある神武天皇「東征」の歌の一節から拜借したものであつたとしても、それがどうした、といふ程度のものでしかない。
發句に於いて字餘りはそれを補足(カバア)する爲にあるが、それでも言葉足らずになる場合は、それがその器に見合はないといふ事であるから、例へば發句以外の「短歌・詩・小説」といふ中から内容と調和(マツチ)する他の形式を見つけ出して活用するのが普通で、そこら邊(あた)りの匙(さじ)加減を心得てゐるのが創作者の器量といふものであらう。
午前中はどんよりと曇つてゐたが、午後になつてから天竺川の堤防を歩いてゐると、まるで箕面の山の方から人の住む町へと雨が降り出して來るやうである。
さうして、雨は晝(ひる)から夜の闇の中へと降り續けて行き、一日毎に暖か味を増して行く。
かういつた込み入つた内容は下句の「七七」の十四文字が増えた短歌の方が柄に合ふようである。