旋頭歌(せどうか)一首
三月十八日
道に一人山果てなくて灰色の空
透明な傘に耳貸す雨の言の葉 不美男
みちに ひとり やま はてな くて はいいろのそら
C♪♪♪ ♪♪ †ζ┃♪♪♪♪♪♪†┃♪♪♪♪♪♪†┃
とう めいな かさ にみみかす あめのこ とのは
♪♪♪♪†ζ┃γ♪♪♪♪♪♪♪┃γ♪♪♪♪♪♪♪┃
初案は下句の「透明な傘に耳貸す雨の言の葉」が浮んで、これを何とか發句の「五七五」に纏めようと思つたのだが、どうにも近江不忍(あふみのしのばず)の手に負へない。
どうやらこれは發句よりも和歌の出番のやうである。
さうと思ひを巡らせて紫不美男にお出ましを願つて詠んだ一首がこれである。
上句の「道に一人」は字餘りで、「道に」が三連符(♪♪♪)で詠む事で四拍子として解決してゐる。
旋頭歌とは和歌の一體(いつたい)で、短歌が「五七五七七」の三十一(みそひと)文字であるのに對(たい)して、旋頭歌は「五七七五七七」の三十八文字であるから、短歌に比べて七文字多い事になる。
和歌には他に佛足醫師歌體(ぶつそくせきかたい)といふ「五七五七七七」といふ形式のものや長歌などもあるが、短歌の上句の「五七五」が發句(明治以降は正岡子規(1867-1902)によつて俳句と呼ばれる)になり、旋頭歌の上句の「五七七」を片歌(かたうた)といふ。
この旋頭歌は筆者が知る限り近年ではただ一人、芥川龍之介(1892-1927)が『越しびと』といふ二十五首の相聞(さうもん)があるばかりである。
飜(ひるがへ)つて、面映(おもはゆ)いが筆者に和歌の四部作があり、それは四十首を一つの物語として詠み、第一部を四章からなる敍事短歌『愛ニ飢タル男』として發表し、第二部を敍事旋頭歌「しろたへ」として三章からなつてゐ、第三部を同じく敍事旋頭歌『うたかた』として二章からなり、第四部を全一章の敍事短歌『しらとり』として完結してゐるが、この二つの旋頭歌の外に作る人は絶えてしまつたやに思はれる。
次にいつ詠まれるかは解らないが、にしても久し振りの旋頭歌である。
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