發句教室『鳰(にほ)の會(くわい)』
アミイユ豐中庄本
この作品を讀む時、この音樂を聞いて鑑賞して下さい。
これは高秋美樹彦による、
『 Motion1(竪琴・harp)』
といふ曲で、YAMAHAの「QY100」で作りました。
映像は奈良懸にある、
『石舞臺』
へ出かけた時のものです。
雰圍氣を味はつて戴ければ幸ひです。
ない方が良いといふ讀者はご自由にどうぞ。
§
この度、奉仕(ボランテイア)活動の一環として、『とよなか地域ささえ愛ポイント事業』で發句教室を開催する事となつた。
その教室を『鳰の會』と命名する事にした。
その由來を述べれば、筆者の俳號である近江不忍(あふみのしのばず)から説明する事になるが、暫くお耳汚しを我慢してもらはなければならない。
筆者の俳號は近江不忍(あふみのしのばず)といふが、この近江は『古事記』では、
「近淡海(ちかつあはうみ)・淡海(あはうみ)」
と記されてゐて、琵琶湖の呼稱がそのまま國名になつたもので、この近江に對して同じく淡海で遠い浜名湖を指して遠江(とほたふみ)の國といふが、そこから近畿を導き出し、廣く關西といふ程の意味を與(あた)へたい、或いはさう意識させたいといふ願望を込めた譯である。
また不忍は、嘗(かつ)て上野臺地と本郷臺地の間の忍ヶ丘(しのぶがをか)と呼ばれてゐた地名に由來し、一六二五年に江戸幕府は西の比叡山延暦寺に對應(たいおう)させる爲に、この地に寛永寺を建立し、開祖の天海(慈眼大師)は不忍池を琵琶湖に見立て、竹生島に準(なぞら)へて辨天島(中之島)を築かせて辨天堂を創建したといふ、この『不忍池(しのばずのいけ)』から名前を拜借したもので、この上野から關東を導き出して、關東と關西に名を轟かさんといふ身分不相應な大層な俳號なのである。
この會の名前である『鳰』とは「かいつぶり」の事で、漢字では「鸊鷉」と表記するが、これは環境依存文字だから文字化けをして世界通信網(インタアネツト)では使用しにくく、日本では、本州中部以南では留鳥(りうてう)として一年中生息するが、北部や山地のものは冬に移動する處からか季語としては冬である。
作品としては、
湖や渺々として鳰一つ 子規
みづうみや べうべうとして にほひとつ
C♪♪♪♪†ζ┃♪♪♪♪♪♪†┃♪♪♪♪†ζ┃
といふのがある。
他に、
「鳰照(にほて・動ラ四)る」
といふ語義は未詳であるものの、琵琶湖の水面などが月の光に照り映える意として、
さざ浪や志賀の浦風海吹けば
鳰照りまさる月の影かな 「新続古今・秋上」
さざなみや しがのうらかぜ うみふけば
C♪♪♪♪†ζ┃γ♪♪♪♪♪♪♪┃♪♪♪♪†ζ┃
にほてりまさる つきのかげかな
♪♪♪♪♪♪†┃γ♪♪♪♪♪♪♪┃
とか、
「鳰照るや」
といふ「志賀(しが)・矢橋(やばせ)」などの琵琶湖畔の地名に掛かる枕詞があり、
鳰照るや志賀の浦風春かけて
さざ波ながら立つ霞かな 「新千載・春上」
にほてるや しがのうらかぜ はるかけて
C♪♪♪♪†ζ┃γ♪♪♪♪♪♪†┃♪♪♪♪†ζ┃
さざなみながら たつかすみかな
♪♪♪♪♪♪†┃♪♪♪♪♪♪†┃
とか、
「鳰鳥の」
といふ「鳰鳥が水に潜(かず)き長くもぐる」意から、「葛飾(かづしか)・息長(おきなが)」に掛かり、
鳰鳥の葛飾早稻を饗すとも
その愛しきを外に立てめやも 「萬・三三八六」
にほどりの かつしかわせを にへすとも
C♪♪♪♪†ζ┃♪♪♪♪♪♪†┃♪♪♪♪†ζ┃
そのかなしきを とにたてめやも
♪♪♪♪♪♪†┃♪♪♪♪♪♪†┃
といふ例があり、また、鳰鳥が雌雄並んで水に遊ぶ意から、「なづさふ」「二人並びゐ」に掛かる、
思ひにしあまりにしかばにほ鳥の
なづさひ來しを人見けむかも 「萬・二四九二」
おもひしに あまりにしかば にほどりの
C♪♪♪♪†ζ┃♪♪♪♪♪♪†┃♪♪♪♪†ζ┃
なづさひきしを ひとみけむかも
♪♪♪♪♪♪†┃γ♪♪♪♪♪♪♪┃
更に、「鳰の浮巣(うきす)」といつて、かいつぶりの巣が蘆の間などに作られ、それが水に浮いてゐる樣子から、和歌などでは「寄邊のない哀れなもの」として詠まれ、夏の季語として扱はれてゐる。
留めに、琵琶湖の異稱(いしよう)として「鳰の海・鳰のみづうみ」といふ言葉がある。
鳰の海や潮干にあらぬかひなさは
みるめかづかむ方のなきかな 「夜の寢覺め・四」
にほの うみや しほひにあらぬ かひなさは
C♪♪♪ ♪♪†ζ┃♪♪♪♪♪♪†┃♪♪♪♪†ζ┃
みるめかづかむ かたのなきかな
γ♪♪♪♪♪♪♪┃γ♪♪♪♪♪♪♪┃
また、發句では、
五月雨に鳰の浮巣を見にゆかん 芭蕉
さみだれに にほのうきすを みにゆかん
C♪♪♪♪†ζ┃γ♪♪♪♪♪♪♪┃♪♪♪♪†ζ┃
という俳聖芭蕉の句がある。
以上の、琵琶湖の古稱である『鳰』をこの會の名として發足したいと思ふ譯である。
二〇一五年三月三十日(月)店二階にて記す
註)「γは八分休符・†は四分音符・ζは四分休符 」の代用。
§
自己紹介
近江不忍(あふみのしのばず)
皆さんがこの會にどの程度のものを望まれてゐるのか解りませんが、出來れば本格的なものを考へてをります。
とは言つても、いきなり專門的なものから始めるのもどうかと思ひますので、追々と水準(レヴエル)を上げて行けば良いのではないかと考へてゐます。
ですから、餘りに容易くてがつかりされる場合もあらうかと思はれますが、そこは暫く我慢強くお附合ひ下さい。
とはいへ、私も途上の一人でありますから、一緒に勉強して行ければと思つてゐます。
§
基本的な事
一、發句と俳句
一、歴史的假名遣で
一、歳時記を携帶するやうに
一、俳號を考へよう
一、發句規範
一、季題と吟行
一、添削に就いて
一、連歌の愉しみ
これらを基本として會を進めて行きたいと思ひます。
第一囘 發句(ほつく)教室『鳰(にほ)の會(くわい)』
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