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店先の布袋さんの由來

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我が店先の『布袋さん』

 

004 

 

 お好み焼『味幸』は二〇一二年九月十五日に、それまで二十年以上も營業してゐた庄内榮町の『かしこ』から豐南町に移轉(いてん)して開店(open)した。

 早いものであれからもう二年になる。

 さうして、店先には守護神のやうにして高さ一米(meter)程の金色の『布袋さん』が鎭坐(ちんざ)在(ましま)してゐるが、この物體(objet)を置くやうになつたのは、正直いつの頃からだつたか判然(はつきり)としないのである。

 物覺(ものおぼ)えの良い幸(みゆき)ちやんに聞いても、

 「正月過ぎだつたやうな……」

 と曖昧(あいまい)な事を言ふぐらゐであるから、いい加減な筆者などは當(あ)てにならないこと夥(おびただ)しい。

 ただ憶えてゐるのは、二階が住居になつてゐる所謂(いはゆる)店舗附住宅を借りた時、二階に前の人の荷物が殆ど殘つてゐて、勿論、荷物は處分(しよぶん)しなくてもその儘で構はないと言つてゐたからではあつたが、時間を見つけてはその二階を整理してゐる時、押入れの中に件(くだん)の『布袋さん』の存在に氣がついたのである。

 その時は、眞逆(まさか)それを店先に飾るなんて思つてもみなくて、さりとて廢品回収に出すといふ譯にも行かず、それをどうしたものかと考へあぐねてゐた。

 そこでふつと閃いたので二階から抱へて降りると、何をごそごそしてゐるのかと訝(いぶか)つたみゆきちやんが、

 「何それ、ほかす(捨てる)の?」

 と、いつもの笑顏で聲をかけて來た。

 「いや、店の入口の横に設置しようと思つてね」

 さう應(こた)へる筆者に、

 「えゝ、嘘!」

 妻はびつくりして、そんな事をするなんて恥づかしいといふ困つたやうな表情を浮べた。

 

 調べて見ると、抑々(そもそも)布袋は唐代(六一八年-六九〇年及び七〇五年-九〇七年)も末の明州で實在(じつざい)したとされる傳説(でんせつ)的な佛僧(ぶつそう)で、名を釋契此(しやくかいし)と言ひ、寺に住まずに處々を泊り歩いたといふ。

 大きな袋を背負つてゐた事から『布袋』という俗稱がつけられ、その太鼓腹の姿とも相俟(あひま)つて水墨畫の好題材として描かれ、背負つてゐるその袋は「堪忍袋」とも言はれてゐる。

 雪の中で横になつても布袋の身體の上だけは雪が積つてゐなかつたとか、或いは人の吉兇を言ひ當てたなどの逸話も多く、極めつけは彼の殘した偈文(げもん)に、

 「彌勒(みろく)眞彌勒、世人は皆な識らず、云々」

 という句があつた事から、布袋は彌勒の垂迹(すいじゃく)則(すなは)ち化身なのだという傳聞が廣まり、中世以降からは中國で布袋に擬(なぞら)へた太鼓腹の姿が弥勒佛の姿形として描かれるやうになつたが、その最期の逸話も、魂だけが神仙となつて、殘つた肉體は生きてゐた時と變(かは)らないといふ仙人の尸解(しかい)のやうな不思議な話が傳(つた)へられてゐて、天復年間(九世紀末)に奉川懸で亡くなつて葬されたにも拘らず、後に他の州で見かけたといはれてゐる。

 鎌倉時代に禪畫(ぜんぐわ)の題材として布袋が受容された日本では、庶民から福の神の一種として信仰を集め、軈(やが)て室町時代後期に成立した七福神に組入れられ、肥滿體(ひまんたい)の布袋は廣い度量や圓滿(ゑんまん)な人格、また富貴繁榮を司るものと考へえられて定著(ていちやく)した。

 彌勒寺にある日本最大の布袋像や、黄檗宗大本山萬福寺で、三門と大雄寶殿の間に設けられた天王殿に四天王や韋駄天と共に安置されてゐる布袋形の金色の彌勒佛像は西欧人にMaitreya(彌勒)と呼ばれてゐるさうである。

 

 依頼品(鑑定だんか!)を、いや本體(ほんたい)を見てみよう。

布袋さんの數珠 011

 首にかけてゐるものは數珠(じゆず)で、

左手の瓢(ひさご) 006

 左手には瓢(ひさご)を提(さ)げて、

 013  016

 右手で肩から後ろに背負つてゐるものは、正(まさ)しく『布袋』の代名詞ともなつた大きな袋である。

 布袋さんの顏の大寫し(アツプ) 008

 さうして、その福々しい滿面の笑みを湛へた表情は、色々な『布袋さん』の繪や像がある中でも屈指の笑顏で、これは身贔屓(みびいき)かも知れないが、實際、本當(ほんたう)にさうだと自負出來るぐらゐの代物である。

 日本で二番の笑顏!

 

 

 かくて『布袋さん』は我が店の前に坐を占める事となつた。

 それを見た子供達も、

 「面白いね」

 と次女が言つただけで、概(おほむ)ね讃意は得られなかつたが、誰の意見も受容れずに強行突破をしてしまつた。

 

 

 今ではすつかり定著して、道行く家族づれがあると店の前で子供が立止つて、

 「撫でてご覧」

 といつて、まるで頭がよくなる御利益がありでもするかのやうに『布袋さん』の頭を撫でて行く。

 その内、身體(からだ)の惡い部分を撫でれば治癒すると思はれかねないやうな勢(いきほ)ひである。

 

 えツ、日本で一番の笑顏は誰かツて、

 いふまでもなく幸(みゆき)ちやんである。

 莞爾(くわんじ・につこり)!

 

          二〇一四年九月二十八日(日)午前二時半 店にて記す

 

 

 

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『置き布袋』

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TEL 06-6334-2218 午前11時~午前12時30分

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