一月七日
七種粥(ななくさがゆ)の日に
人日やその心根の優しさよ 無空
じ んじつや その ここ ろねの やさ しさよ
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初案は「優しさはその心根や靈辰日」であつたが、「靈辰」については『人日』でさへ諒解(りやうかい)される人が少なからうにと考へたものの、『人日』の方がましだらうと最終案にした。
正月の七日は言はずと知れた「七種粥」を食べる日で、別に『人の日』ともいふが、これは中國の前漢時代に、
「元日=鷄・二日=狗・三日=猪・四日=羊・五日=牛・六日=馬」
と續いて、「七日」を、
「人を占ひ、人を尊ぶ日」
と定められ、「人勝(じんしよう)節」などとも言はれる。
五節句の最初であるこの日は七種粥を食するが、元旦からの食事で胃の負擔(ふたん)を輕くする爲とも言はれたりするが、本來は七種の穀物である、
「米・稗(ひえ)・麥(むぎ)・粟・黍(きび)・大豆・小豆」
を炊いた固粥で十五日に食べてゐたものが、平安期以降には中國に倣つて七種の菜を炊込むやうになつたさうで、萬病(まんびやう)や邪氣を払ふ行事として廣く知られてゐる。
晝食(ちうしよく)に七種粥が振舞はれたが、體(からだ)を勞らうといふ心遣ひの二重の優しさを感謝しつつ戴いた。
18、七草考・『日本語で一番大事なもの』大野晋 丸谷才一 中央文庫 摂取本(セツシボン)